36th KN

自習のサポートを目的に開設しました。目的の問題を探すのに手間取るかもしれませんが使ってみてください。

三島由紀夫とTPP

今から50年前の1970年に亡くなった作家に三島由起夫がいます。

仮面の告白』『金閣寺』『潮騒』などの作品を発表し、ノーベル文学賞の候補にもなっていたと言われるほど、国際的にも評価の高い作家でした。彼は最期に社会的に大きな事件を起こして自殺するのです。

 

さて、ここでは三島由起夫の作品や思想についての説明をするのではありません。彼が今から50年前に亡くなったことに焦点を当てます。

 

2018年12月30日にいわゆる「TPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)」が発効しました。これに伴って日本国内の様々な法律が改正され、文学と関わりが深いところでは「著作権法」が2019年1月1日から大きく変わることとなりました。

世の中には著作物があふれています。しかも著作を発表する媒体はどんどん変化していきますので、著作権法は改正を繰り返しています。その中で2019年からの改正では著作物などの保護期間が延長されました。これはかなり大きな改正です。

それまで著作権の保護期間は50年でした。例えば芥川龍之介は1927年7月24日に亡くなったので、翌年の1928年1月1日から50年後の1977年12月31日に著作権の保護期間が終了し、1978年1月1日からは基本的に自由に誰でも芥川龍之介の著作物を利用できることになります。

 

青空文庫」では、ボランティアの方々による入力や校正などの作業を経て、保護期間が終了した作品を閲覧できるのです。その「青空文庫」にとって、著名な作家の著作権の保護期間終了が近いことは、新たな作品を掲載するチャンスでもあるので重要なことです。

TPPの交渉を日本とアメリカが行っている際に、著作権の保護期間延長が議論になっていることに対して、「青空文庫」の運営の方が、保護期間の終了を間近に控えている三島由起夫の作品が掲載できないのは残念だと述べているのを見たことがあります。ビッグネームの掲載作品が増えることで新たな閲覧者を獲得することはサイトの運営にプラスに作用するからです。

 

というわけで、三島由起夫の作品はまだまだ著作権法の保護期間内です。「青空文庫」では読めません。かわりに教科書には『美神』が収録されています。まだの人はぜひ読んでみましょう。

 

著作権法 (e-Gov法令検索)

TPPに関する著作物等の保護期間延長について比較的わかりやすいQ&Ahttps://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_chosakuken/1411890.html

 

『人間失格』と『不連続殺人事件』

このタイトルを見て関連がわかる人はなかなかの文学通です。

 

ご存じのとおり『人間失格』は太宰治の代表作といってもよい作品です。読んでいて愉快な気分になることは難しいのですが、名作といってよいでしょう。

太宰治文学史的には「無頼派」の代表的作家として位置づけられています。第二次世界大戦中から文壇に登場した「無頼派」の作家たちは、戦後の混乱した社会の中で世相を批判する作品を残します。

 

『不連続殺人事件』は「無頼派」の一人である坂口安吾の小説です。坂口安吾の人生は「無頼」を体現しているといえるほど破天荒なのですが、『堕落論』という評論で文学史に確固たる地位を築いています。

「殺人事件」が示すとおり、これは推理小説です。そして日本推理小説界の巨匠である江戸川乱歩松本清張から高い評価を受ける傑作です。

現代の感覚からすると不適切な表現もありますが、推理小説ファンはもちろん、純文学への入口として、一読をおすすめします。

 

青空文庫 Aozora Bunko